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The Story of Submariner
●もう一つのサブマリーナ物語 −SSモデル−

−第1章−
SUBMARINERの誕生
[Ref.6204 , Ref.6205 , Ref.6200]
レックスは腕時計をもっと実用的でいつでも使えるようにするために、完全防水のオイスターケースを作り出した。1926年のことである。それは水深165ft(50m)まで保証されていた。

陸の上で実用的に使える時計のベースは完成をみた。次は、来るべき海洋の時代を見越し、オイスターケースを更に追求した、海の中でも実用的に使用できる腕時計の開発である。
そして、オイスターケースの開発から約30年後の1954年、本格的ダイバーズウォッチとしてサブマリーナは世に送り出されたのである。記念すべきファーストモデルにはリファレンスナンバー“6204”が与えられ、600ft(約180m)の防水性能を誇っていた。

Ref.6204は、600系ムーブメントのCal.A260を搭載した、セミ・バブルバックである。ほぼ同時期に、Ref.6205も発表されている。ムーブメント、ケース、針、防水性能などは変わらないが、ダイヤルおよび竜頭が若干異なるようだ。
どちらのモデルも、当初は現在のようなメルセデス針ではなく、ペンシル型の針で、秒針も針の先端にポイントがあった。これらは、視認性の問題などで、比較的早い時期に現行に近い物に変更されている。
気になるのは防水性能である。600ft(約180m)防水なのは前述したとおりだが、後に登場するRef.6536は、ほぼ同じケースにも係わらず、330ft(100m)防水である。つまり、防水テストでは600ft(約180m)の性能を達成していたが、何らかの理由でその防水性能を維持することができなかったために後のモデルでは、防水性能のレベルダウンを余儀なくされたと推測することができる。
しかし、330ft(100m)くらいの防水は確保されていただろうし、当時としては間違いなく優れた防水性能を備え、時計を保護するカバーを使わずに、海(水)の中で使用できる画期的な腕時計であったはずだ。

カタログどおりの防水性能でなかったことも私の勝手な想像だが、サブマリーナを発表する前の試作品の中に市販可能なケースで水深660ft(200m)に耐えうるオイスターケースも当然存在したはずだ。
しかし、それは660ft(200m)を達成するためにケース、風防とも分厚いものであった。見た目には特別仕様と思わせない時計で高い防水性能のダイバーズウォッチを求めたロレックスは、ケース、風防を薄くすることを試みた。その結果ファーストモデルとして送り出されたのがRef.6204なのである。
しかし、前述したとおり何らかの理由でその防水性能を維持出来なかったために、翌1955年に、660ft(200m)防水のRef.6200(*1)を発表することになる。このモデルこそ、試作段階で採用されなかったケース、風防を使用したものなのである。そう推測する理由は、ファーストモデルより若い番号のリファレンスにある。また、何故か8mmと大型のリューズについても、フランス語で特許を意味する"BREVET"の文字が刻印されていることなどから試作品であったと推測できる。
したがって、生産ラインに乗ったRef.6204やRef.6205は、現在でも見かけることができるが、Ref.6200がほとんど見つからないのもそのためで、生産数量は少なかったと考えられる。
このRef.6200のムーブメントは、Ref.6204、6205とは異なり700系のCal.A296が採用されている。一般的にはエクスプローラータイプのダイヤルということで知られ、しかも、ダイヤルにサブマリーナの文字が無い物もある。これも試作品の名残とも思えるのである。(このモデルに関しては、通常のドットタイプのダイヤルを見たことがない。他のモデルには両方存在するものもある。)

サブマリーナには、ご存知のように、酸素ボンベの残量を計るために回転する60分計回転ベゼルが備わっている。この三つのモデルには、現行のような15分までにある、分単位の刻みが無く、全て5分刻みである。
そして、現行とは異なり、リューズガードは存在しない。
ちなみに、ダイヤルの防水表記もこれらのモデルには見られない。



−第2章−
ムーブメントの開発が盛んな時代
[Ref.6536 , Ref.6538 , Ref.5508 , Ref.5510]
1950年代後半から1960年代前半は、ムーブメントの開発が盛んな時代である。この頃は多くのムーブメントが発表されている。そして、1957年頃、全回転両方向巻き上げのローターを採用したムーブメントのCal.1030を搭載したRef.6536Ref.6538(*2)が発表される。
Cal.1030は5振動、18,000回転である。このムーブメントの登場により自動巻きの巻き上げ効率は向上されている。

Ref.6536の防水性能は、330ft(100m)で、ケースは、Ref.6204、6205とほぼ同タイプである。カタログデータから見れば、前のモデルより防水性能をレベルダウンさせたことになる。しかし、これが正しい防水性能と思われるのは前述したとおりである。
Ref.6538の防水性能は、660ft(200m)で、Ref.6200と同じケースを使用している。Ref.6536と同じナンバーのCal.1030でありながら、こちらは、クロノメーター仕様である。
サブマリーナでは初めてのクロノメーター仕様で、ダイヤルには、"OFFICIALLY CERTIFIED CHRONOMETER"と表記されている。
どちらのモデルもダイヤルには防水表記が追加され、また、ベゼルには15分までの分単位の刻みが追加されている。しかし、Ref.6536は、15分までの分単位の刻みが無い初期型のベゼルを使用したモデルや、ダイヤルに防水表記が無いモデルも確認されているので、最も初期にはRef.6200番台の部品を流用していたと思われる。
また、Ref.6538にはそのような傾向があまり見られないので、Ref.6536より若干遅れて発表になったのではないかと推測される。もっとも、ケース、リューズ、風防などはもともと流用であるが・・・。
ただ、Ref.6538にも全く無かった訳ではなく、ベゼルはレッドトップタイプ(*3)がこのモデルの特徴だが、Ref.6200と同じベゼルやダイヤルを付けたモデルもあっただろうし、クロノメーターでないモデルも存在することから、やはり移行期にはいくつか現在ではあまり確認できないモデルもあったのだと思う。よく話題にされるジェームズボンドモデルもこの移行期に作られたモデルではないかと想像している。

更に、1958年頃、1500系のムーブメントを搭載した、Ref.5508およびRef.5510が発表になる。これらも今までと同様に330ft(100m)と660ft(200m)の防水仕様である。ケースについても然りである。
Ref.6536やRef6538との大きな違いは、ムーブメントにノンクロノメーター仕様のCal.1530が搭載されていることである。Cal.1530は、1030と同様に5振動、18,000回転であるが、構造的には進歩している。また、一方がノンクロノメーターでもう一方がクロノメーターと言うような分け方はなく、基本的にはどちらもノンクロノメーター仕様である。
しかし、これにもいろいろなタイプがあり、Cal.1530を使用しダイヤルにクロノメーターの表記があるタイプ、Cal.1530のクロノメーター仕様であるCal.1560を搭載したクロノメータータイプ、そして、クロノメーター仕様のCal.1560を搭載しながら、ダイヤルにクロノメーターの表記がないタイプの存在が確認されている。
つまり、この頃は生産性もそれほど高くはなく、生産精度にもばらつきがあり、クロノメーター仕様のムーブメントでも、クロノメーター試験に不合格になるものが結構存在し、そのムーブメントは、あえて組み直して精度を上げるようなことはせずに、ノンクロノメーターとしては十分な性能を持っていたので、そのままノンクロノメーターモデルに使用されていたと思われる。

Ref.5508は、数多く(長期間)生産されたようで、現在でも比較的容易に見つけることができる。
また、Ref.5510はその後継モデルである、Ref.5512の登場によって短命に終わったのではないかと推測される。現在では、Ref6204などの初期モデルより、探すのが難しいようだ。

この頃からしばらくの間は、多くのムーブメントが開発されたと同時に、サブマリーナも多くの種類が存在し、同一モデルでも違うムーブメントが使われていたり、クロノメーターとノンクロノメーターが混在していたりした。



−第3章−
リューズガードの登場・1500系ムーブメントの時代
[Ref.5512 , Ref.5513 , Ref.1680]
1960年代に入り、リューズガードの付いたサブマリーナが発表される。Ref.5512(*4)である。防水性能は660ft(200m)で、330ft(100m)モデルは発表されていない。
このモデルは一般的にクロノメーター仕様として知られているが、発表された当初は、やはり、ノンクロノメーターでRef.5508やRef.5510と同じムーブメントのCal.1530を引き続き採用していたタイプとCal.1530のクロノメーター仕様であるCal.1560を使用したクロノメータータイプが存在している。
そのほかにもRef.5508と同様にCal.1530のクロノメーター仕様であるCal.1560を使用しながらダイヤルにクロノメーターの表記がないタイプも確認されている。その後、Cal.1570に変更を受けてこのモデルは純然たるクロノメーターということになる。
変更個所は、ケースにリューズガードが付き、大きさも約37mmから39.5mmへ大型化されている。また、回転ベゼルは、まだ両方向に回転してしまうが、板バネが入り、ベゼルをプッシュしないと回らない構造になった。
この時、330ft(100m)防水仕様の方はどうなったかというと、Ref.5508が引き続き生産されている。

1965年頃になり、ノンクロノメーター仕様のRef.5513が発表される。また、ほぼ同時期にカレンダー機能を備えた、Ref.1680も発表されている。これらのモデルから、今までのツインロックリューズにかわり、トリプロックリューズが採用されている。防水性能はまだ660ft(200m)である。
そして、330ft(100m)防水仕様は姿を消していくことになる。

Ref.5513のムーブメントはCal.1520で、Cal.1530を、5.5振動、19,800回転に精度を向上させたタイプのノンクロノメーター仕様であるとされている、しかし、このモデルも当初はノンクロノメーターのCal.1530(17石)を採用していたと思われる。それは、サブマリーナのパンフレットにRef.5513は17石のムーブメントを使用という記述があるからである。
そして、1967年頃、ロレックスは生産に関する技術革新を行い、いっきに生産性と生産精度を向上させることに成功した。それまで年間の生産数量は、その10年間あまりは毎年約8万個で推移していたが、1967年には約29万個と飛躍的に伸びている。それと同時にムーブメントの生産精度も飛躍的に向上し、クロノメーターとして製造したムーブメントはそのほとんどがクロノメーター試験に合格するようになったのだろう。
そしてムーブメントはこれまでと違い安定した供給を受けるようになり、これまでのように同一モデルに混在されることなくRef.5513にはCal.1520、Ref.5512にはCal.1520のクロノメーター仕様であるCal.1570のみが本格的に搭載されるようになったと考えられる。また、Ref.5513にもCal.1570を搭載したクロノメーターモデルが少数存在したようだが、それも1967年より前の混在期のものではないかと思われる。
ちなみに、Ref.5513には市販されていないが、軍用モデルや派生モデルとしてシードゥエラーと同様のエスケープバルブを備えた、コメックスバージョンのRef.5514なども存在する。これらは、アンティークウオッチとして、現在では購入可能である。
そして、現行モデルのRef.14060が登場する1980年代の終わり頃までいくつかのマイナーチェンジを受けながら生産され続け、サブマリーナの中で最も長い間生産されたリファレンスナンバー(1998年現在)になっている。

Ref.1680は、カレンダー機能を初めて搭載したモデルである。ムーブメントは、Cal.1520のクロノメーター仕様であるCal.1570にカレンダー機能を加えたCal.1575である。(ムーブメント本体には、1570と刻印されている)そして、忘れてならない最大の特徴は、ダイヤルにある"SUBMARINER"の文字が赤くなっていることである。俗に言う"赤サブ"だ。
この赤サブは、一般的には1970年から4年間くらい製造されたとされているが、1960年代のモデルでも赤サブの存在が確認されているので、Ref.1680の当初からのバリエーションだったのではないかと思われる。また、もしかしたら、1967年の技術革新と関連しているのかもしれない。

1960年代後半から1970年代後半にかけての十数年間は、基本的に1500系のムーブメントを使用し、カレンダー機能のない従来からのモデルで、クロノメーター仕様(Ref.5512)とノンクロノメーター仕様(Ref.5513)、カレンダー機能を備えたモデルで、クロノメーター仕様(Ref.1680)が存在していたことになる。そして、70年代に入っての大きな改良点は、各モデルのムーブメントにハック機能が備わったことである。
また、1500系ムーブメントの使用期間が長かった理由には、次のモデルに搭載されることになる3000系ムーブメントに採用されたクイック セット−デイト カレンダー機能の開発に手間取った結果でもあるようだ。



−第4章−
新ムーブメントの登場・クイック セット−デイト カレンダー機能
[Ref.16800 , Ref.14060 , Ref.16610]
1977頃になり、新しく3000系のムーブメントが開発される。性能は、8振動、28,800回転と、ハイビートになり、カレンダーモデルには、クイック セット−デイト カレンダー機能が備わった。
そして、1978年頃に、Ref.1680の後継モデルで、ムーブメントにクロノメーター仕様、カレンダー付きのCal.3035を採用したRef.16800(*5)が発表になる。このモデルからは、風防にサファイアクリスタルが採用され、当初は従来どおりの660ft(200m)防水だったが、後に1000ft(300m)防水へとアップする。(初期モデルの失敗があったために慎重になったのだろうか?)
同じ頃、クロノメーターのRef.5512は姿を消していく。
Ref.5513は、引き続き生産され、カレンダー無しのモデルはノンクロノメーターで、カレンダー付きがクロノメーターというモデル分けが確立された。

そして、1989年、現行モデルのRef.14060およびRef.16610が登場し、Ref.5513とRef.16800は姿を消していく。
共通する変更点は、回転ベゼルが逆回転防止になったことである。そして、Ref.5513の後継モデルRef.14060も1000ft(300m)防水に変更された。
どちらのモデルもムーブメントは、8振動、28,800回転のハイビートタイプである。 Ref.14060は、カレンダー無しのノンクロノメーター仕様で3000系のCal.3000、Ref.16610は、カレンダー付きのクロノメーター仕様で3100系のCal.3135である。



−第5章−
SUBMARINERの将来
1954年に600ftの防水性能を備えた(本当は330ft程?)ダイバーズウォッチとして登場したサブマリーナも形状や性能を変えながら、40年以上も生産され続け、現在では1000ft(300m)の防水性能を備えている。
機械式の実用的なダイバーズウォッチとしては、かなり完成してしまったと思われる。ムーブメントは、既にハイビートになっているので、今後はどのような改良が加えられるのだろうか?
新しい技術で精度を向上させるのでしょうか?
それとも、クロノグラフ版が発表されたりするのでしょうか?
全体的にはどうなっていくのだろうか?
更に防水性能を向上させるのでしょうか?
それとも、素材をステンレスからチタンやもっと新しいものにし、強度や重量を変えるのでしょうか?
それとも、市販モデルにもエスケープバルブが備わったりするのでしょうか?
それとも、ケースのデザインを変えてしまうのでしょうか?
それとも、・・・・?



補足説明

(*1) Ref.6200
ある情報誌には、1958年頃、NEW6538(*2参照)とほぼ同時期に発表されたとなっている。
しかし、600ft防水モデルのRef.6204やRef.6205を発表し、その翌年くらいに660ft防水を発表したという記述もあり、このRef6200が1955年頃に登場した最初の660ft(200m)防水モデルであると考えている。(関連:*2)
また、このモデルはプロトタイプの一つであったと考えていることは本文で記述したとおりである。
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(*2) Ref.6538
ロレックスの研究本や時計の雑誌には、このモデルが最初の660ft(200m)防水モデルで、最初のクロノメーターとされている。
そして、1958年にケースなど外観的には、ほとんど一新したNEW6538が登場するとなっている。
そのことを裏付けるためにではないが、1957年当時のパンフレットが、雑誌に紹介されている。そのパンフレットによると、リファレンス番号は6538で、660ft(200m)防水、クロノメーターモデルと見て取れる。
そして、Ref.6204と同じ様なイラストがRef.6538としてプリントされている。もちろん他の書籍のいうところのNEW6538ではない。
これらから想像すると、最初のRef.6538は、Ref.6204のバージョンアップ版で、1955年かその翌年くらいに登場し、見た目はRef.6204と同様で、防水性能は660ft(200m)に向上させたモデルということになる。(ムーブメントは不明)
しかし、そうなるといくつかの疑問が生じる。以下に箇条書きすると、
1. 全く同じケースに見えるが、どうやって防水性能を向上させたのか?
2. NEW6538は、同じく660ft(200m)防水にも係わらず、何故、ケースの厚さや風防の厚さを、数ミリ厚くしたのか?
3. しかも、Ref.6536は、Ref.6204と同じようなケース厚なのに、何故、防水性能を330ft(100m)に落としたのか?
である。このリファレンス番号が最初のクロノメーターモデルであることには特に異論はない。
結論は、そのパンフレットのイラストに問題があり、本来のRef.6538のイラストではなく、別のイラストを使用したと考える方が納得できるのである。
そして、(*1)のように、最初の660ft(200m)防水は、Ref.6200で、1957年頃、Ref.6356とほぼ同時期にRef.6200のケース、風防、リューズを流用し、ムーブメントにはCal.1030のクロノメーター仕様を搭載して(書籍等でいうところのNEW6538)最初のクロノメーターモデルを発表したと考えている。
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(*3) レッドトップタイプ
Ref.6538のベゼルのトップ(通常は12時の所)の逆三角形マークが赤く塗られている。
初期の頃には、他のモデルにも赤いタイプが希に採用されていたが、通常は、ほとんどのベゼルがシルバーである。
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(*4) Ref.5512
リューズガード付いた最初のモデル、リューズガードがあり、カレンダー機能が付いていないモデルで、クロノメーターモデルなのは基本的にはこのRef.5512のみである。
Ref.5513にも存在するが、それはイレギュラーモデルである。ということで、現在では人気のあるモデルである。
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(*5) Ref.16800
Ref.16800について、日本ロレックスでは1981年頃からと言っていましたが、ここでは、1978頃の登場としています。
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